生成 AI 導入でサポートデスク対応の工数を約9人日削減！Google Cloud を活用した問い合わせ要約・検索機能の開発

課題

サービス拡大に伴い cloudpack のサポートデスクへのお問い合わせが増加しており、お客様対応に時間がかかっていた。
サポートに関する過去のナレッジが蓄積されているものの、検索機能が限られており有効活用できていなかった。

対応と結果

Google Cloud を用いて生成 AI 活用基盤を構築し、お問い合わせ内容の要約機能と所定フォーマットへの変換機能を開発。
1件あたりの問い合わせ解決までにかかっていた時間を平均8日から5日へと、3日間短縮した。また、サポートデスク業務対応工数も1ヶ月あたり71人日から62人日へと、9人日削減した。

アイレット株式会社は、cloudpack のサポートデスク業務に生成 AI を活用し、お客様の課題解決を迅速化しています。本プロジェクトの詳細をご紹介いたします。

サービス拡大に伴い、サポートデスクでの対応の負担が増加。お客様の課題解決を迅速化すべく生成 AI 活用を計画

アイレット株式会社（以下、アイレット）は、クラウドの導入設計から構築、監視、運用保守までを総合的に支援するフルマネージドサービス「cloudpack」を提供しています。本サービスに関するお客様の困りごとを解決する窓口としてサポートデスクを設置しています。

近年、cloudpack の導入規模が拡大すると共に、お客様からのお問い合わせ件数も増加し、解決までのリードタイムに課題が生じていました。また、すでにサポートに関する過去のナレッジは豊富に保有されていたものの、検索機能が限定的な範囲でしか適用されておらず、関連度の高い過去の問い合わせの発見に時間がかかっていました。

過去の類似した事例の検索を容易にすることで、お客様の課題解決をより迅速に対応できるようにしたい。そのような思いのもと、サポートデスク業務における生成 AI 活用基盤の構築・実装を計画しました。

Vertex AI を活用し、お問い合わせ内容を所定フォーマットに変換しながら要約。ハルシネーション発生も大幅に低減し、精度の高い回答を実現

将来的に全社で利用可能なツールにすることを想定し、Google Cloud のマネージドサービスを用いたデータ活用基盤を構築しました。システムは、Cloud Run 上で動作する仕組みを構築しています。Cloud Run には、インフラストラクチャの管理を気にすることなくアプリケーション開発に集中できる点や、オートスケールによる柔軟なリソース調整が可能な点にメリットがあります。

サポートデスクから、お客様の質問や困りごとをクラウドベンダーに問い合わせる場合、所定のフォーマットに入力する必要があります。その作業を効率化することも考慮し、Vertex AI を用いてお問い合わせフォームに入力された内容をテンプレートに成形しながら要約する機能を実装しました。

ベンダーの公式ドキュメントを Web 検索する機能については、Vertex AI Agent Builder を活用して実装。複数の検索キーワードを生成 AI で作成し、それぞれの検索結果に対してスクレイピングを実行・取得した内容を統合することで、検索精度を向上させています。

また、生成 AI 特有の課題であるハルシネーション（誤った情報の生成）に対応すべく、プロンプトの設定によって情報源を明示することと、質問に答えられない場合はその旨を回答し、無理やり回答を作り出さないようにコントロールし、ハルシネーションの発生を大幅に抑制しています。さらに、生成 AI の回答の不安定さを解消するために、回答精度を監視し、基準を満たさない場合は再生成する仕組みも導入しました。

今回の開発で実装した機能では、お客様が問い合わせフォームに入力した内容を生成 AI が所定のフォーマットで要約した上で、クラウドベンダーの Web サイトや過去のデータソースを自動で検索し、一次対応の推奨内容と参照リンクを Slack 上でチャットボットが回答します。この機能を実際のサポートデスク業務に導入したところ、問い合わせ解決までにかかっていた時間を1件あたり平均3日間短縮することができました。また、要約による内容の早期把握と所定フォーマットへの変換を自動化することで、サポートデスク業務の工数を1ヶ月あたり9人日削減しています。

生成 AI を活用してサポート回答の品質の向上・回答時間短縮を実現することで、弊社で推進している「次世代MSP」へと近づくことができました。

生成 AI を活用したサポートデスク業務の DX にご興味のある方は、ぜひお気軽にアイレットへお問い合わせください。